メカといっても、車でもなく、ラジコンでもなく、言ってみれば、物理的な「機構」が好きなのである。機構という概念は、好き嫌いという対象でないともいえるが、「機構を変換」して、無かった機能を実現することに、魅力を感じる。
「機構」というのは、いろいろと工夫をして、ある動きを別の動きに変換するものである。色々なメカを見ると、そのアイデアが詰まっており、それを見るだけでわくわくする。こうやって目を養うことで、自分の研究の装置開発に直結するし、日々の実験実習の方法の改善などにも役立つ。
面白いと思った装置を見て、さらに、どういう風に動いているのだろうというのを想像するのも、思考実験である。街を歩きながら、常に考えている。
前にも書いたことがあるが、絶対音感を持っている人は全ての音が音階で聞こえるというが、私は物を見ると機能が浮かんで見える(半分冗談、半分本気)。
機械系の学科で、エンジニアリング教育として行われているようであるが、建設系では聞いたことはない。昔から興味は感じていたが、体系化して考えたことはなく、その体系化がなされていることを、失敗学で有名な、東京大学工学部の畑村先生、中尾先生の書いた教科書類によって意識するようになった。
ヨット部顧問をしているので、たまたま関連業者のホームページを見ていたら、面白い道具を見つけた。スマホに接続する、風速計である。
ヨット部の活動だけでなく、建設現場・橋梁の現地調査の環境測定などでも活躍しそうである。
<思考開始>
少なくとも、iPhoneは、何かの情報を風速計から受け取っている。
iPhoneが情報を取り込むことができるのは
マイク端子:アナログの電気信号の強弱として
カメラ:画像認識として。ただし、この風速計の場合、カメラから風速計が見えないので×。
WifiやBluetoothの通信:これが一般的だろう。ただし、価格5000円というので、小型の装置で実現できるのだろうか。(2018/4追記:Amazonで2000円になっていた)
まず、考えたのが、マイク端子。写真も、風速計をイヤホン端子に挿しているので。
自転車用スピードメーターを使ったことがある人ならわかるが、磁石のようなものをタイヤのスポークに設置しておき、その磁石がセンサー部を通過することで、回数をカウントし、回数に、周長を掛けることで距離がわかるものである。同じように、風速計がまわることで、磁石のようなものが廻れば、周囲の磁界を変化させる。それをマイク入力端子に直結しておけば、何らかの電流の変化となって検知できるはず。音として拾って、その周期を解析すれば、回転数がわかる。
<思考終了>
では、答え合わせ。
実際のところ、マイク端子は、計測には使っておらず、単に物理的に挿しているだけだった。iPhoneとは無線通信しているという。
なるほど。
そうすることで、風速計は取り外して、別のところに置いておき、ワイヤレスで風速がわかるという。便利だ。
その場合、それだけの小さい装置で、電池はどうしているのだろうという疑問も。もしかして、風力発電してそれを利用していたら、すごい。わくわくする。しかしその場合には、風速がゼロの場合、発電しないわけで、風速ゼロなのか通信不良なのかの区別がつかないのでダメか。
もう一つ、最近見つけた、私の興味を惹く装置。
ナルセペダル、というブレーキとアクセルを踏み間違えることがない装置。
詳細は、リンク先を見ていただくこととして、踏み込んだら必ずブレーキが作動し、アクセルを作動させるには、つま先を右に動かすという。右に動かして発進し、その途中でも、奥に踏み込めばアクセルは離れて、ブレーキがかかるという。
これこそ、物理的な「機構の変換」である。
今、4年生の「創成工学」において、担当学生に、構造力学の教材モデルを作ってもらっている。今年は到達できなかったが、橋のモデルに変形を与えることで、普段は目に見えない「曲げモーメント」を物理的に可視化する模型を作ろうと考えている。来年は是非完成させたい。
これも、「機構の変換」である。
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