1年半前、うちの高専のコンクリート系の教員の最年長になり、材料実験室の管理は私が中心となった。
管理方針としては、3つある。
1) 片付けをする
←整理以前にモノを捨てる必要があった。倉庫番(ファミコンのパズルゲーム→今は死語)すら成り立たず、まず捨てないと動かす場所がなかった。1回目の大掃除は昨年終わりトラックN台分を処分した。今年は、その後の整理で出てきた不要物がまだまだ待っているが、保留中。
2) 今の教員構成や授業・研究内容に合わせて使いやすく変更する
←現在もなお進行中。今は、コンクリートを研究する助教2名が増えて、3名のコンクリートを扱う教員がいる。洗濯機を設置したり、コンクリートガラの捨て方を明確化したり、ゴミ捨てを明確化したり、教員毎の個別スペースを確保したり、は完了。今度は、デザコン(ブリッジコンテストのようなもの)の活動拠点も実験室に移転することになったので、それが大きな所か。
3) 様々な装置や設備を持続可能的に管理するシステムを作る
←まだまだこれから。圧縮試験装置の荷重検定の資金をどうやって稼ぐか、ミキサーの摩耗をどうするか、なども。
結構大きなことで、コンクリートの洗い水を排出したり、ピットに溜まったノロを捨てることが、手がつけられずにいた。ピットが溢れそうであるが、手をつける時間がとれず先延ばしであった。本題は、こちらになる。だいぶ貯まってきたので、手をつけなければと思っていて、体制が整ってから・・・と先延ばしをしていたら、今日、その日は来た。私の記憶に残る日になろう、9.14。
で、話は今朝に遡る。
朝、コンクリートミキサーの修理・メンテ(←これも懸案事項)のために業者の方との打合せがあるので、練混ぜ室に行くと、排水ピットの排水ポンプが空回りしている音がする。このことは、横浜国大助手時代に似たような経験をしているので、すぐにピンときた。用事が終わってから、ピットの蓋を開けると、ノロが溜まりすぎて、水中ポンプのフロートスイッチが溜まったノロに引っかかり、水中ポンプが止まらなくなっていた。水はカラに。
結論を先に言うと、先延ばしに出来ない状態になっていたので、技術職員の助けも借りて、2時間掛けて、全体の修理が完了した。メデタシ。
以下、技術情報としてマニアックなので、読まなくても結構。
コンクリートの洗い水は、ピットに溜めて、沈殿させつつ、流入する水を、水中ポンプで屋外ピットへ運ぶ。今回は水中ポンプが動いたまま止まらないという誤作動をしていた。
水中ポンプには、フロートスイッチ(浮きがついたスイッチ)が上下2個ついていて、浮いて傾きが変わることで、オン、オフになる。水位が上がると、下、上の順番にスイッチが傾いて2つのスイッチが同時に浮くとポンプが動き出し、水を排出する。徐々に水位が下がるが、今度は、下のスイッチが元の位置に戻るまで水を排出し続ける。よってある程度溜まったら、ポンプが作動し、下限までいくと止まる、という動作を繰返す。このことは、横浜国大助手時代に困って業者に相談して教えてもらっていたのが役に立った。
今回、ノロが溜まりすぎていて、下のスイッチが下がりきらなかったものである。障害を取り除くためには、ノロを排出しなければならない。大掃除の時に学生に手伝ってもらおうと思っていたが、今やらねばならないので、自分がやるしかない。とりあえず、40リットルのトロ舟に3杯、ノロをすくって、掃除完了。
綺麗な水を貯めて水中ポンプを作動させようとすると、モーターは動くが、水が排出されない。何故だ?
ポンプを持ち上げて動かすと、吸入口から、握り拳大のセメントのかたまりが出てきた。これが詰っていたようだ。掃除でノロが動いて固形物が入ってしまったらしい。
再度ポンプを作動させようとするが、ポンプは廻るが、まだ水が動かない。不思議だ。試行錯誤してわかった。水中ポンプは配管が付いているので、自由な方向には動かせない。その状態で、配管の邪魔にならないようにギリギリ傾けて、水中から出して底部の流入口を確認して、また水に漬けて動作確認、という作業をしていた。既にピットに水が溜まっているので、ポンプを水に漬けると同時に、ポンプは作動する。わかったことは、中に空気が溜まった状態で作動させると、エアが噛むようで水が動かないようであった(その時は気づかなかったが、既に配管が半分閉塞していたようで、それも遠因であったよう)。このことは、横浜国大助手時代に困って業者に相談して教えてもらっていたのが役に立った。
解決策としては、試行錯誤だったが、水中に手を突っ込み、フロートスイッチを下げてわざと水中ポンプを止めること10秒、遅れて空気がボコボコ上がってきた。ラッキー。これで、空気が抜けるようだ。数回繰返して、水がでるようになった。
しかし、まだ水の流れが遅い。チョロチョロしか動いていないようだ。
途中、配管がフレキシブルホースに変更になっている箇所があり、それが折れ曲がって狭くなっている箇所があったので、そこを何度も曲げ伸ばしをしていたら、一気に流れるようになった。「やった解決」と思っていたら、しばらくして、再度水は止まってしまった。
想像が付く。多分、フレキシブルホースを動かしたお陰で、ホースの内面に溜まっていた固形物が剥がれて排出されるも、途中でそれが閉塞してしまったようである。このことは、横浜国大助手時代に似たような経験をしているので、すぐにピンときた。良いことを言おう、ホースの途中でホースを揺らしてはならない(その理由は後半へ)。
またもや困難。
ホースの先は、屋外のピットである。地中の配管を通って、ピットに流れている。実はこのピットが鬼門であった。屋外ピットの蓋になっているグレーチングが取れないのである。グレーチングは上からスポッとはまっているので、垂直に持ち上げないととれないので、バールのようなものでテコの原理で上げようとしても、斜めになってしまうのでダメなことはわかっていた。このことは、横浜国大助手時代に似たような経験をしているので、すぐにピンときた。前述の通り、1年半掃除が進まない理由が、グレーチングがとれないことだったのである。
しかし、現在、これを解決しない限り、排水ポンプが閉塞したため、コンクリートを練ることも出来ないし、そもそも、実験室の排水が全てここに集中しているので、実験室内で手すら洗えない。
「林先生のいつやるの?今でしょ」が発動されて、忙しいけど今やらないと大変なことになる、ということで、1年半開かずの扉を開けることとした。
100kg以上の力が必要はわかっていた。今ある道具を使うには、チェーンブロックで引張るしかない。このことは、横浜国大助手時代に似たような経験をしているので、すぐにピンときた。横浜国大時に使った三叉がないので、他に何か反力を取るためのものが必要である。第一に、脚立。これがダメなら、屋外の屋根のフレームがたまたま真上にあるのでそれから引張ること。結局、第1弾の脚立にロープをかけて、チェーンブロックを介して、大きな力で持ち上げて、開かずのグレーチングをあけることができた。
そして、また、その中のピットが深い。さらに、3杯のノロを搔きだしたところ、目当てのホースの先端が出現した。案の上、ノロに埋まっていることと、途中の固まった固形物ののかけらで閉塞しているのがわかった(透明ホースなので見える)。細かい振動を与えながら徐々に閉塞物を取って行くと、最後にドバーっと水が出てきた。このことは、横浜国大助手時代に似たような経験をしているので、すぐにピンときた。良いことを言おう、振動は、ホースの最下流側から行うこと。そうしないと、その下流で再度詰るのである。鬼門の排水ピットの蓋を開けなければならなかったのは、ホースの末端から振動を加えるためでもあった。ついに運河開通である。
ということで、1つ敵を倒すと、また次の敵が現れるファミコンゲームみたいになってきて、最後は、ラスボス「グレーチング」を倒すまで、ストップすることができなかった。
午後は、私は事務方による物品検査が待っていて絶対に終わらせなければならないし、そのまま放置しても、誰かが実験室で水を使ってしまうと早急に実験室内で排水が溢れてしまう「排水の陣(造語)」であった。
前日まで出張が続き8日も不在で、学校の現場から離れていたが、良い洗礼となった。事件は現場で起きている。
またトラブルシューティングに詳しくなった。何度も、(赤字で)「私が助手時代に」、と書いて読みづらかったと思うが、全て、自分で考えて体験したことが、このように確実に身についており、それがあったから短時間で解決をした、ということも言いたかったためである。今朝の出発時点も、かすかな乾いたモーターの音にピントきたことである。(そんなことしないが)イヤホンで音楽聴きながら実験室を歩いていたら絶対に気づかないことである。
失敗が人を育てるとは言ったもので、それを私以外の若手教員や学生に、このような経験またはそれに準じた体験を行わせることが、今の課題である。
2017年9月14日木曜日
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