なぜ既存構造物の耐震補強が進まないのか、というのは、大きなテーマである。
以前から思っている素人考えを披露したい。1年以上前、たまたま懇親会で一緒になった、国土交通省の●●局長にお話したら、否定されてしまったが。
1)建物の耐震の数値(なんというかわからない)を公表する(まずは任意。今後義務付けるはどうかは検討)
2)今の情報化社会では、誰かわからないが、食べログのようなサイトで、そのお店が入る建物の耐震情報が、紐づけられる。
3)結局、安全に利用したい人は、そういう建物を利用しているお店を利用するようになるため、利用価格に反映されるようになる。(安全な建物は店のコストも高く、危険な建物の店は安くなる)
4)耐震補強をするインセンティブが働く。
5)公表しない場合は、悪かろう、と周囲は見るようになる。
あまりにも性善説であろうか。
市価よりも低い価格というのは、通常は何か欠陥がある。以前、山陽の方で、違法建築のホテルで火災があって、沢山の人が亡くなった事件があったが、やはり、格安でという評判のホテルだったと聞く。
耐震に限らず、安い飲み屋は、通路が狭かったり、非常階段に物を置いて通れなくしていたり、というのがある。
夜行高速バスの事件も同じ構図だと思っている。安い価格は何か無理をしているし、逆にきちんと安全運行している会社は、それなりの価格を提示する。こちらは、事故が起きて、大きく制度が変わってしまったが。
このようなリスク情報を可視化して提供を受ける義務とまではいかないが、きちんとやってコストをかけている会社はそれを提示することで、それに対価を払う人が集まるはずである。
義務化しなくても、きちんとやっている会社が、正当な評価を受けるために公開するところから始めればよいと思う。私はそういう会社を利用したい。表示をしていない会社は、NGと思われるから、認証を取るようになるだろう。
単に飲食店を例に提示したが、マンションの購入価格、賃貸住宅の価格、などにも反映できる。さらに、そこで使用する、火災保険、地震保険などの料率に影響しうる。銀行の融資なども反映しないものであろうか。
耐震強度の公的認証制度をどうするかはまだ詰めていない。自己申告だけでは偽装もあるだろう。ここは別途検討が必要である。
なお、建物の耐震というのは、生じる地震によっての応答であるから、確率的に考えると、地域性があるはずである。その辺の技術的な解釈の啓蒙も大事だろう。日本の良くないところは、数字だけが独り歩きして、潔癖までも数値にこだわるためである。1を下回っても、確率論的に利用者が許容すれば、利用すればよいのである。 (建物の倒壊が、周囲に影響を及ぼすというのは、別の次元として別途制御が必要)
前職の国立大学では、安全衛生にも携わっていた。結局のところ、研究室を運営する教員の意識をどうやって高めるか、知識を向上させるかが問題であった。研究室のトップが動かなければ、何も変わらない。
そこで、案が出たのが、教職員向けのセミナーを開催した際には、受講カードのようなものを発行し、それを研究室の扉にでも貼ってもらうことであった。受講しない教員については、事務的に注意される程度であれば、あまり教員にとってインセンティブにならない。しかし、学生に対して受講状況が公になることは、受講のインセンティブになるのではないか、と。学生からの信頼を失うと、研究室の運営はやりにくい。ただし、同時に、学生へのこの重みを伝えておくという教育も併せて必要である。
このアイデアは、インパクトが大きすぎるということで、見送りになったが、その時は、とりあえず受講状況は記録しておき、何かあるときに、過去にさかのぼって実現できるような体制にはしておいた。その後は知らないが。
インセンティブを適切に設定することが大事で、人間の駆動力になると思っている。義務だけで声高に叫んでも誰もついてこない。
2013年10月3日木曜日
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