「ゆりかごから墓場まで」とは、人の一生を表す言葉であるが、人間以外にも比喩で用いられることが多い。
私が1年ちょっと前まで加入していた、日本コンクリート工学会 関東支部 若手会21という委員会において、「コンクリートのゆりかごから墓場まで 弾丸見学ツアー」という企画を私が3年ぐらい前に提案した。単にこのようなアイデアを思いつくのが好きというだけで、単なる言いだしっぺだったが、実際には、委員会のメンバーがそれを上手に肉付けしてくださり、予備調査、そして本番企画まで実施していただいた。ちょうど、私が転職するときだったので、最終の本番は参加できなかったのは残念であった。
その企画とは、次の趣旨である。
コンクリートは次のように作られて、最後は役目を終える。すなわち、鉱山から掘り出してセメントの原料である石灰石を産出する。セメント工場でセメントを製造する。生コンクリート工場でのコンクリートを製造する。工事現場で、コンクリートを打込む。実際に構造物が完成して使われる。場合によって劣化して、補修をする。場合によって解体される。リサイクルされる。
それぞれ、土木工学の分野で職業があり、色々な人が働いている。しかし、このコンクリートを中心とする広大な流れについて、全体に携わっている職業の人は、皆無である。大抵、セメント会社、製造、設計、施工、等、専門分野に細分化されている。
土木工学の分野は、全体を見るべきと言われているものの、実際に仕事に就くと、ある一部分を担うこととなる。これは仕方がないものの、このような流れの中で、自分の職業の(時系列で言う)上流や下流の仕事を知らない人が多い。全体的な立ち位置を知った上で、さらに今の自分の職業に誇りと責任感を持つことができるのではないか。
また、就職活動をする学生も、細分化した科目でしか学習していないし、会社訪問をしても細分化した部分でしか見ることができない。
よって、時系列に沿って、現場見学を行うという企画である。
石灰石鉱山、セメント工場、生コン工場、建設現場、完成した構造物、劣化した構造物、補修現場、解体現場、リサイクル施設。これを、あくまでも時系列で、できれば1日で廻りたい。
このように一気通貫で勉強することは意義があると考えている。コンクリートの複雑さ、奥深さ、ダイナミックさを学ぶのである。結果として、時間と場所の制約から、本委員会での見学会は埼玉県を舞台として、1泊2日になったが、とにかく、全部を見ることがに意義があるというのは変わらない。
コンクリートの父と呼ばれた吉田徳次郎博士について、お墓をコンクリートで作ろうとしたという逸話があり(実際には、墓石は石で造られた)、その代わりに、弟子たち
が石でできた墓の周囲にコンクリートのブロックを作って置いている、という。その吉田徳次郎博士の墓参ができれば、本当の文字通りのコンクリートのゆりかごから墓場までとなる。こちらは、諸事情で実現はしなかったが、ここまでできれば、コンクリート技術者の垂涎の見学会となるであろう。
このアイデアは、いつでも使えると思うので、四国でも何か行いたいと思っている。
この話題はその(2)に続く。
2014年5月14日水曜日
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