畳の掃除は、畳の目(いぐさの繊維方向)に沿って箒(ほうき)を動かすべし、というのは、昔からの知恵というか日本人の常識であろう。小学校の何か総合学習や、家庭科で習ったと思う。
掃除機も、同じように畳の目に沿って、というのを聞いたことがあるし、私もこれまで一応そうやってきた。ただし、家具の下など、どうしても1方向しか掃除機をかけられない場合には、畳の目に直角にしなければならないケースもあり、小さいころ、幼心にルールを破っているのではないかと、ちょっともやもやしたものがあった。
さて、よく考えたら、掃除機の場合、畳の目に沿って動かす必要があるのだろうか。常識を疑ってみる。
ヘッドにパワーブラシがついている掃除機の場合には、回転軸に沿ってブラシが回転するので、ブラシの移動方向は一方向となり、箒の運動に似ているので、掃除機を畳の目に沿って動かすのは一理あるかもしれない。
しかし、道具が登場した時刻歴に沿って考えると、時系列では、古い順に、
箒 → パワーブラシのついていない掃除機の登場 → 箒の駆逐 → パワーブラシのある掃除機の登場 → ルンバの登場
となっているため、ここでは、パワーブラシのない掃除機の登場した時点について考察してみる。
掃除機がゴミを吸う機構を考えると、吸引吸い込み時の負の圧力の大小ではなく、圧力差によってもたらされる気流の発生、すなわち、空気の速度が関係しそうだ。もし、仮に、掃除機のヘッドが密閉式であれば、平らな床にくっつけたら、一切気流は発生しないので、定常状態になればゴミは吸わないはずである。ヘッドと畳の間に適度な隙間があることが、ゴミを吸い取る効率に影響しそうである。
掃除機のヘッドを長方形にモデル化し、その中央に空気を吸う箇所があるとする。畳は、繊維方向には細いが数の多い隙間があり、繊維と直角方向には、糸で織っているために生じる、数が少ない大きな隙間がある。どちらを通した方が、気流が大きくなるだろうか。長方形なので、中心から離れるに従い圧力のロスもあるはずだ。
現状で、機構を単純化できたが、その結果どちらが気流が大きいかは、現時点でのブログの執筆ではわからない。鉛筆を出して計算するのが面倒だなと思ったが、ちょうど、流体解析が可能な汎用3次元FEMソフトウェアを購入したことを思い出した。高専内の別学科のI先生と共同でライセンスを分割購入したのだが、先日納品され、本日からライセンスが有効になるという。まず、流体解析のトレーニングとして、この、掃除機問題を解いてみたいと思う。
馬鹿げた話、と笑ってくれるがよい。
しかし、世の中で常識と言われて信じられて来たことが、全くのでたらめだったことや、実際には意味がなかったこと、が科学的に論破された事例は多い。
例えば、
電気をこまめに消すと、点灯時の電力が大きいので、つけっぱなしがよい(→点灯回数が電球の寿命に影響を与えるが、電気消費には影響しない)
予防接種を受けたから一生安泰(→大人になると効果が弱くなることは、最近社会問題に)
セミは羽化後1週間で死ぬ、はかない人生である(→実際にはもっと生きる)
研究者たる者、何事にも疑問を呈してみたい。
ただし、後日談もある。ネットで調べたら、吸引力のほかに、掃除機のヘッドを動かす際に畳に傷をつけるのだが、繊維方向であれば傷が目立ちにくい、という考えもあるという記述を見て、納得。吸引力とは関係ない次元の話である。ということは、冒頭の、家具の下などは、結局できた傷も見えないので、そのままやっても問題なさそうである。
2013年9月17日火曜日
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