これまで明治時代の土木技術者 田辺朔郎 について、琵琶湖疏水建設の若い頃までしか知らなかった。すなわち、田村嘉子「京都インクライン物語」の知識しかなかった。この本だけでも、心を揺さぶられない土木技術者はいないだろう。
一昨年、著者の田村嘉子さんが逝去されたのを機に、著作をほとんど注文した。大抵の本は絶版になっており、中古で買い集めた(amazonでポチッとのみですが)。
この夏苫小牧に出張に行ったこともあり、1年ぶりに積読になっていたその本を開いた。
田辺朔郎の壮年期、日露戦争を前にした富国強兵の時代に、日本の発展のために北海道に鉄道を結ぶという一大プロジェクトを成し遂げる姿に、ハラハラしながらページを読み進めた。総理大臣、政治家など、錚々たる名前が出てくる中、その政治家と遣り合ったり、国会で答弁したり、そして北海道に戻れば、鉄道建設を指揮するとともに、雪の中遭難しかけながら自分の足で路線を決定する。狩勝峠の命名者でもある。
久しぶりに土木系の本を読んで、改めて勇気が湧いてきた。ぜひ、京都インクライン物語とセットで学生に読ませたい。
コンクリート技術者であれば、この本にリアルタイムで出てくる広井勇が、小樽に防波堤をまさに作らんとしていることも心を躍らせるだろう。
北海道開拓に詳しくない人には、次の本もお勧めする。
吉村昭「赤い人」 明治時代、北海道開拓を進めるために、日本中の囚人を集めて道路を作った過酷なドラマ。この内容も踏まえて、本書を読むと、その事業の重みをより理解できると思う。
そして、時代を知るには「坂の上の雲」も。
2013年8月22日木曜日
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