(末尾に追記有り)
香川県民にはいまいち盛り上がりに欠けているという報道も聞いていた、セトゲー(瀬戸内国際芸術祭)2013に関連して、建築家の丹下健三生誕100周年プロジェクトとして香川県立ミュージアムにて、「丹下健三 伝統と創造 瀬戸内から世界へ 展(9/23迄!)」が開かれている、のをつい最近意識した。
http://www.tange100.jp/
これを知ったのは、8月頭に北海道出張帰りの高松空港内にポスターが貼られていたためである。そういえば聞いたことあったかも、と思って3月に入手した県のパンフレット(昨年末発行、丹下健三特集)を紐解くと、8月末に記念シンポジウム予定、とあったので、ウォッチすることにした。
お盆休みに1週間帰省していて、帰ってきて調べてみると、なんと、2日間の丹下健三記念のシンポジウムが、実はお盆に行われていて、昨日終わったばかりというサプライズであった。8月末(予定)となっていて、結局は8月中旬になって確定していたのである。HPで調べればよかった。
セトゲーは、春、夏、秋、に分けて行われており、3月頃は頻繁に報道していたのだが、結局よくわからないまま春季が過ぎ、夏季に突入していた。県内に住んでいると、職場と自宅の往復をしていた身には、このような情報が入っていなかったのは確かである。
丹下健三展、そろそろ行こうかな、と思っていたところ、横浜国大のK君が高松に来る予定との報告を聞いて、せっかくだから丹下健三展行ったら?とは紹介したものの、自分が行っていないので強く勧めてよいものか疑問に持ち、さっそく週末にやってきたものである。
前置きが長くなった。
丹下健三。恥ずかしながら、コンクリート打ちっぱなし建築で有名な人、有名な建築物の名前と作品は一致する、というくらいしか知識がなかった。
香川県庁舎の2つ隣の高校に通っていたので、丹下健三が設計したという事実は知っていた。香川県立体育館も有名なノアの方舟のような、オリンピックのあの代々木体育館に似ている建物で、ということも知っていて、中学校総体でバスケの試合などで何度も利用したことがあるという、ちょっとした親しみは持っていた。
9時の開館に合わせて入場し、1度一人で全部を見たら80分経過。丁度10時半から、専門職員の解説があるということで、それにも参加してみた。予定の1時間を超過して職員の解説が終わって、合わせるとたっぷり3時間弱過ごした。
一部、解説者の方の言葉も踏まえながら感想を記してみる。
彼が高校時代に雑誌に載っていたルコルビジェの建築を見て建築家を志し、故郷である今治、広島の戦争の原体験を経て、広島の原爆記念資料館を作るに至った。個々の建築物だけでなく、軸線を意識した力強い建築。無脊椎動物から、軸線という一本筋の通った骨を持った、脊椎動物への進化、だそうだ。
丹下風という言葉がない(ということも知らなかったが)ように、常に最新の技術を取り入れながら、他人の良いものはどんどん吸収して、常に変化しているという。
香川県知事 金子正則 も変わり者で、香川の地に、いろいろな有名建築ができていく。そして、丹下健三もその時々の建築の際に、イサムノグチ、猪熊弦一郎、などの美術家とも出会って、彼らと一緒に創造していく。直接の弟子や、プロジェクトに携わった人が、今度は瀬戸内で有名な建築家として育っていく。香川庁の建築課の職員 山本忠司 が触発されて(?)建築家になるなんて、面白い話だが実際に起こっているというのも素晴らしい。そして現在では世界で評価されるようになって、原題のような、瀬戸内から世界へ、へとつながっていく。
瀬戸内国際芸術祭には、まだ参加していなかったが、ちょっと覗いてみたい気になってきた。
丹下健三は、生前は自身の展覧会は望まなかったようで、実際に大々的にこのような会が催されるのは世界で初めてという。また、これが、東京や大阪などの地方(笑)で開催されることはないという。9月23日まで。土木、建築、コンクリート、に携わっている方は、これだけのためにも、ぜひ来県される価値はあると断言する。
この開催は、丹下健三のお弟子さんたちや、今日本で活躍中の建築界の方々が協賛して作られているようである。建築模型が、○○大学●●研究室などで作られているのも一緒に展示されており、これもまた、精巧に良くできている。虫眼鏡を持ってきてもよいぐらいである。
東武ワールドスクエアのミニチュア建築は、双眼鏡(望遠鏡)を通して見ると実に面白い。ファインダー越しに望遠として覗いたり、逆にして覗くと広角になって全体が見える、等。今回も、明らかにマニアであるが、持ってきてもよいかもしれない。次回来ることがあれば、持ってこよう。絶対に挙動不審で声をかけられるが。
メモ帳と鉛筆も必須である。なお、ボールペンを出してメモしようとしたら、学芸員の方に止められた。ボールペンは誤って作品の上に落としたら、作品を汚すリスクがあるので、と、代わりにお持ちの鉛筆を貸していただけた。
展示No119 香川県庁舎建設の際の、「香川県庁舎本館議会議事堂新設工事設計図仕様書」に書かれていた一節。
特-12 (四)打放し「コンクリート」工事特記事項
1 型枠工事
Ⅰ 一般事項
(イ)従来の「仮枠」の概念を廃し、「鋳物」を作る様な心得で正確な「型枠」の作業に努力すること。従って大工の選定には十分注意し・・・・・
コンクリート打ちっぱなし建築の丹下健三の思いが詰まっているのではないだろうか。
なお、高松の地元業者「森本組」がコンクリートの施工をしたという。大林組の下請けとしてだったそうだが、そこで鍛えられて、その後も全国の建築工事で活躍した、という。
そういう、展示には書かれていない、周辺情報も解説されていた。こっちも脳みそフル回転で、逃さぬように聞き入ってしまう。終了時には、お客さん20人ほどから拍手を受けていた。
その解説者のIさんは、県庁職員とおっしゃっていたので、建築課の方かと思って、挨拶したら、文化振興課の方という。趣味が転じて、というか、解説内容もポイントも的確で、とても素晴らしかった。
解説は、10:30、13:00、15:30、18:30(9/1以前は20時閉館。9/2以降は17時閉館のため注意)に、約1時間かけて行われる(たまに休みの場合もあるので、当日telで確認した方が良いという)。展示だけではわからない全体の流れ、裏話も聞けるので、ぜひお勧めする。これは急ぎ足なので、やっぱりじっくりと一人で見てみたいので、合わせてやっぱり2時間以上かかる。
これを見ると、これを聞くと、香川県庁に訪れたくなる。これも23日まで、香川県庁のツアー(予約制)があるので、私もこれから申し込みたい。私は平日しか無理そうなので、午前有給休暇を取ってでも参加したい。
関連する建築家による、瀬戸内の建築を紹介するコーナーもあり、これを見てから豊島や直島に行くと、さらに面白いかもしれない。
追記1)
香川県庁舎ガイドツアー に申し込んだ。私が可能な日は、2日間しかなく、迷ったうえ、明日の午前。雨なので、場合によっては、写真写りを考えて、もう1日も申し込むかも。
追記2)
この丹下健三展の図録集は、8月中旬に完成したという。展示は7/20からだったので、むしろ丹下健三に興味のある方で既に行った、という方は、入手できなかったのでは。価格は3300円で、図録だけでなく、前半はゆかりのある方々の丹下論が繰り広げられている。買った。
改めて調べてみると、図録集の位置づけではあるが、一般図書扱いなので、一般でも入手できるようである。
2013年8月24日土曜日
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