昨日、2日間の調査が終わった。総括をしてみる。
今回は、この現場の第4回目の調査にあたり、今年度最後のケリをつける段階だ。学生2名が主体になった調査で、彼らが計画を立て、メンバーを集め、実行するものである。私の役割としては、全体を見て、彼らの段取りに致命的な漏れがないか、全体の調整の観点からの指摘、などであった。
そもそも学生の研究という観点であれば、失敗してもそれで学生が成長すればよいという考えもあり、バランスが難しいところだ。ただし、それはこれまでの3回の調査で十分と思い、今年度最後に当たる今回は、学生に主体を持たせながらも、しっかりデータをそろえたいと考え、私なりに実行した。
その際、責任の所在をはっきりさせ、アドバイスに徹した。また、私も自分がやるべき仕事があるので、ミニマムの介入とした。
1)今回の調査は、こことここを測りたいという明確な目的をもったものである。よって私からの大きなアドバイスは、ちゃんと計画を立てろ、だった。いったい何点計りたいのかという要求と、それは実行可能なのかという制約条件とをつき合わせて、実行可能な計画を立てていく。その際、細かいことよりも、まずはどういう趣旨なのかということを、明確にさせた。
そうなれば、最悪当日本人が居なくても、参加した人が計測できるし、トラブルがあっても基本となることが明確であれば、それに沿って修正も可能である。実際に、ある時間だけ本人が居ない、という状況が生じてしまったが、これがあったおかげで、何とかできた。
2)当初案は、2人それぞれが計画を出しただけだったが、私が絶対に実行不可能と断言した。共通でデータを融通できる場所があったので、その場所はどちらかが担当して計測しなければならない。本当に相手を信頼できるようになるまで計画を練り上げるように指導した。そのためにリーダーの二人が徹底的に要求事項を明確にしてつき合わせるところから始まった。周囲から見る限りでは、最終的にはそれを実行してくれたと思っている。
3)例えは悪いかもしれないが、戦争と同じで、兵站をどうするかが、現場調査の成否を分ける。物資の補給(ある試験器具は1個しかないが、調査は2グループに分かれる)、人員配置(卒論時期、就職活動時期、テスト時期のため、学生も暇ではない。結局、昼を境に、リーダー以外メンバーが全員交代というチームもあった。入れ替わった者の教育をどうするかという問題も)、電源の確保(電源コードをどうやって引くか)、資材の移動(たくさんの箇所を計測しなければならないが、それぞれが離れているので、できるだけ移動量を減らさないと、時間と体力を消耗する)、休息(長時間なので、午前と午後に休ませないと体が持たない)、という状況。これをうまく現地で段取りしないと、終わりそうにない計画だった。
全部を学生に期待するのはなかなか難しいし、机上で教えられるものではない。よって、調査の計画と当初の人員配置を学生にやらせ、後は現地で臨機応変に行うこととした。何で大事なのかは逐次説明するとして、後は、私が采配を振るう背中を見てもらうしかないように思う。
4)チーム内で、リーダーはできるだけ細かい作業を行わないように指導。全体を見て指揮をしなければならない。ただし、人数の関係から厳しかったが、一応彼らもそう考えて動いていたように見える。
私は、さらに2つのチームを見て、機材の割り振り、人員配置の見直しを行って、何とか最適化を行い、時には何度も機材運搬で行き来したり、最後は私もデータ測定も行いながら、当初希望した測定箇所の全データが取れたようである。
後でリーダーの2人と話しをしたが、いろいろと学んだようだ。調査をするには、人と機材を動かす必要があり、それは個人の頑張りだけでは絶対に対処できないことに気づく。ある意味個人は無力であり、協力して初めて何かが実行できる。協力をお願いするにも、日ごろのコミュニケーションが大切なことに気づく。裏方として、前日の夜は細かい段取り作業で夜中までかかることもあるが、結局誰かがやらなければ動かないことに気づく。これまでは他の人がやっていたのを、知らなかっただけ。そして、他人と腹を割って話をして、歩み寄る作業を絶対に怠ってはならないこと。人生の縮図である。