2019年9月2日月曜日

満濃池(まんのう池)

土木史にも出てくる香川県のため池「満濃池(まんのういけ)」。

香川県出身の空海が作った(実際には修復した)という断片情報はあるが、一体何が凄いのかがよくわかっていなかった。地元の土木遺産なのに知らないというのが恥ずかしく、悔しかった。

話は昨年に遡るが、2018年8月に、私の出身の横浜国立大学コンクリート研究室が夏合宿で香川も訪問するということで、私がアレンジさせて戴いたが、いくつかの見学先のひとつに、満濃池を入れた。その時はまだ詳細を知らない状態であったが、先にやるぞと宣言してから始める手法ある。その後、1ヶ月ぐらい、色々と文献を読んだり、管理している土地改良区へヒアリングに行ったりして自分なりに要点がわかってきた。

前に衝動買いで中古で1万円で買った、「明治以前日本土木史」の復刻版も死蔵しかけていましたが、この時に効果を発揮した。良かった良かった。

その結果、私が調べた中では、個々の特徴の資料やweb掲載はあっても、その要点がわかりやすい形で網羅的に掲載された資料はないことがわかった。満濃池という地元で貴重な土木遺産があるわけだから、その魅力を誰かが取り纏めなければならないと思った。

現地を訪れてどういうルートで見学すべきかについても、あまり情報が無かったのでそれも入れる必要がある。

と言うことで、完成したものはこちら。

満濃池を説明する資料は、以下のpdfを見て戴ければと思う。元はパワーポイントなので、欲しい方はメール下さい。

満濃池の説明資料のダウンロード


満濃池、すなわちため池の凄さについて少しお話ししたい。

幼稚園児でも砂場で穴を掘って水を貯めて、ため池らしきものを作る。ため池の何が難しいのだろうかと、少なくとも私はずっと思っていた。砂場との大きな違いは、水を定期的に利用することである。

水は貯めなければならないが、同時に、農業用水として春から秋にかけて有効に使わなければならない。すなわち、水を「出す」機能を作り維持するのが非常に難しいのである。

砂場で、ダムらしきものを作ったとしよう。水を使うために側面の下の方に、小さな穴を開けたとしよう。さあ水が出てきた、では数秒後どうなるか。その水みちの周囲の砂が掘られて、一気に水が流れ出して崩壊したことだろう。

それを、実際の構造物として作らなければならないのである。

上記で取り纏めた私の資料から抜粋する。

要点:
・「池」でなく「ダム」である。堤体高32m。
・壊れて直す、の繰返し。当初は構造体を壊れないようにすることが技術的課題。
・温かい水を取水する装置の開発。
・堤体が完成したら、次は木製樋の劣化と改良の歴史。
・水不足による嵩上げの歴史。
・近年の流域面積の拡大。
・要所要所で活躍した土木技術者。

このような歴史のドラマが満濃池にある。

行きたくなったでしょう?

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブログの移動(に近いもの)

表現活動の主体をnoteに移行しました。時間をかけた論考などはnoteに集約するようにします。こちらのブログはアーカイブとして残しますが、過去に力を入れた執筆したものは、再編集してnoteに投稿することもあります。 https://note.com/hayakazuh このブログ...