2018年8月13日月曜日

ハートで感じる見学会(1) 旧香川県立体育館、香川県庁東館

 題名はわかる人にはわかると思うが、大西泰人(おおにし ひろと)氏の「ハートで感じる英文法」にちなんでいる。ネイティブにとっては、文法は暗記ではなく、必然性から自然と英語が出てくる。大西氏はその感覚を養うことが大事だと提唱している。私の物事の理解も全てそれに基づいており、共感でき、今の高専での授業でもそうありたいと思っており、暗記はするな、こうやって考えるんだ、という授業設計をしているつもりである。以下に示す話も、単発の技術ではなく、なぜそうなったのかという流れを中心に理解したいし、理解してもらいたいという考えに基づいている。振り返りや、今後の再利用のことを考えて取りとりまとめたい。長くなるので、場所毎に分割することにする。

 母校かつ以前の職場であった横浜国大のコンクリート研究室が夏合宿として香川を訪れることになった。主として香川県部分の段取りのお手伝いをさせていただいた。幹事の学生に合宿のテーマを聞いたところ、「原点回帰」との返事だったので、私なりに考えていくつか提案させてもらった。
 夏合宿の大きなテーマは、古いもの新しいもの、コンクリートか否か、土木か否か、こだわらずに、良質のものをしっかり見て考える、というものであると思っている。望むべくは、単に受け身で参加して「面白かった」という「感動の消費」で終わることのないものであれば良い。そうなるかどうかはどちらかというと参加する側の姿勢にかかっているが、できるだけ前後に繋がるようなテーマ設定だったり、説明だったり、を考えてみた。

 今年は、瀬戸大橋30年、明石海峡大橋20年という記念すべき年でもある。結果として、明石海峡大橋の主塔を見学してから、香川に入る行程となった。この部分は携わっていないのでノーコメントとする。ただ、原点というなら、瀬戸大橋が良かったし、大鳴門橋も建設年代という意味では突出している。今回2日目の最後に見た瀬戸大橋のモデル橋とのペアであれば、瀬戸大橋を是非、というのは今でも変わらない。

 香川県の見学先の1つめとしては、デザイン知事と呼ばれた金子正則知事が推し進めた開かれた政治、開かれた公共建築、を体現した、旧香川県立体育館、香川県庁舎東館とした。建築分野の方からは、これもいいけど他にももっと良いものがある、とご指摘を受けるかもしれないが、まだまだ建築分野以外には世の中に知られていないこれらを見てもらいたかった。現代の公共建築の原点であると思う。

 高松で2013年に丹下健三展が開かれたのをきっかけに私自身も相当に勉強していたつもりであったが、今回は建築家で「香川県立体育館保存の会」の会長をされているカワニシノリユキ氏に説明をお願いすることになった。私自身改めて別の人から話を聞くことで得ることもあったし、これらの場所では、私が少し離れた立場でコメントをすることもできたので、依頼して良かったと思っている。カワニシ氏には、翌日の見学にも参加してもらえることになり、色々と彼の考え方に触れることができた。

 県立体育館は、2014年に耐震改修の入札が2度に渡り不調になり、それ以後使用がストップしている。丹下健三が設計した、世界でも有数の建築遺産であり、「ワールド・モニュメント財団」から「危機遺産」として認定されている。舟形の体育館であり、地元からは県立体育館よりも舟の体育館と呼ばれて親しまれていた。私が中学生の時には、バスケットボールの大会でよく舟の体育館を訪れていた。
 清水建設が施工しているが、日本を代表するトップエンジニアのひとり渡辺泰充氏(元 清水建設)のお父様が同じ清水建設の渡辺泰臣工務課長としてこの工事に携わっている。渡辺泰充氏は、私の母校、高松高校の大先輩でもある。さらに、渡辺泰充氏のお嬢様が、横浜国立大学 土木工学科の先輩にあたる。親子3代にわたり、高松、横浜、コンクリートのキーワードで繋がっている。

 構造に関しては、今年4月にカワニシ氏らが主催した写真展に詳しかったのであるが、まだまだ私の中では勉強不足であった。この部分は近いうちに補って、誰にも負けないような説明ができるようにしておきたい。1つ楽しい宿題ができた。

 香川県庁東館は、現在、免震工事中である。スレンダーなこの建物も同様に耐震で問題があり、検討の結果、免震工事を行うことになった。残念ながら、1階のピロティ部分を直接見ることはできなかったが、外観、今回特別に入らせて戴いた2階のホール、そして一般の方も入れる低層棟の屋上から至近で見ることができた。

 耐震改修中に、什器(家具類)の一部が東京で展示されている。森美術館の建築の日本展である。
 以下のページに、香川県庁東館の家具類の詳細が載っているので紹介する。
https://ameblo.jp/art-masciclismo/entry-12380406880.html

 次に示す2枚の写真は、ともにカワニシ氏からの提供である。確か21mm相当の広角レンズとのこと。





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