研究をしていて、それ以前に技術者として活動をしていて、はたまた(昔の話であるが、まだ話せない赤子の)子育てをしていて、不具合の察知をするのは、音、臭い、などの五感である。
橋梁の不具合において五感に現れるのは、路面の段差の発生(走行車両による異音)、橋自体の異音の発生、橋自体の振動の増加、等であろう。部材の腐食などが、最終的に人間の目や耳に触れる不具合になること自体、結構ひどい損傷になっている場合が多いが、少なくともその段階まで来れば検知できなければならない。
場所を自宅に移すが、購入したマンションは築15年を越えているが、リビングのドアの立て付けが悪くなっていた。蝶番から異音がしたり、たまにドアの開閉が硬くなるというものである。構造として微調整する機構はあるが、すぐに緩んでくる。2年以上延命したが、最近は調子が良いなと思っていた矢先、その部品が破断して、動かなくなった。妻から緊急メールが来た。何が緊急かというと、ドアが閉められないために寒いことが緊急であると。廊下に繋がる別の部屋のエアコンをつけ放しにして対応。
私自身としては準備は考えていた。もし壊れたら、同じ部品を使っている家中のドアの部品を外して取り替えればとりあえず大丈夫、ということは元からわかっていたので、妻からの緊急連絡メールにも、冷静に対応し、家に着いたら淡々と交換して事なきを得た。
ネットで検索すると、その部品単体では、3000円+税金(送料込み)で、売られていた。製造中止になっていても、きちんとメーカーが部品提供してくれるのは頼もしい。
右:壊れた丁番、左:届いた交換部品
ともに部品を外してみると、金属部分が破断して粉々になっていた。粉々になったのは、最終的な結果であり、異音がしたり、立て付けが悪くなっていた段階では、マイクロクラックが入って剛性が低下したり、それによりネジが緩み始めていたこと推定できる。
今考えれば、異音がしている段階で、余り使わない部屋の部品と交換しておけば、結果としてもっともっと延命できたかもしれないが・・・。
人の安全に関するものは、実験や家の生活の基幹となるものであれば、あれ?いつもと様子が違う、と気づいた時点で点検し、交換や修理の手配を考えなければならない。では、そこの段階で動けるか、というのが、優れた技術者とそうでない技術者の分かれ目と思う。前者でありたいとずっと思って生きているし、それが私のやり方である。
そういった細かいことも、出来事としては忘れてしまうことが多いので、ブログで蓄積していきたい。