2014年10月14日火曜日

土木工学と電気工学

若干こちらに書きましたが、過去の現場見学、そして現在も続けている現場見学が、特に今の講義作りに役立っています。

高専5年の後期に、何故か「電気工学概論」という授業があります。昨年までは、電気が専門の非常勤講師の先生に実施していただきましたが、今年は後任がいないとのことで、私が引き受けることにしました。

趣味で第2種電気工事士の国家資格を、安全衛生の観点から低圧電気作業主任者の資格を持っていたので、昨年の講義の内容を見て、私が実施しても問題なしと判断しました。とはいえ、せっかく土木の教員が、土木の学生に対して電気工学の授業をするのだから、魅力的なものにしたい、と考えています。もちろん、科目設置時の目的やシラバスを逸脱しない範囲で。

土木で電気というと、わかりやすい対象としては「ダム」がありますが、治水の観点、および、コンクリート構造・施工の観点で語られる事が多いと思います。発電としては、土木の学生は殆ど習うことはないのではないでしょうか。

たまたま私が大学院生の時には、電力中央研究所で横浜国大の非常勤講師を引き受けていただいていた青柳先生から「コンクリート工学特論」で様々なトピックを習ったのですが、内容的にはそれが一番近かったでしょう。殆ど忘れてしまっていますが。青柳先生といえば、原子力発電所のコンクリートの業績も有名です。

さて本題ですが、私が横浜国立大学教員としての在籍時に、多数の見学会に行ったこと・実施したことが、現在の糧になっています。

2008年3月には、教室見学会として、学生の有志が、横浜から自費にもかかわらず愛媛県の見学ツアーに参加しました。そのネタを提供されたのは、青柳先生の後任として、電力中央研究所から非常勤講師としていらっしゃっていたK先生でした。その見学会のメインは、当時建設中だった、愛媛県 波方の石油ガス地下備蓄の建設でした。地下の岩盤を掘り、そこに地下水による「水封」を用いて、天然の貯蔵庫とするものです。地下の岩盤を掘って、石油や石油ガス(LPG)の国家備蓄を行っている場所は、日本では数えるほどしかなく、当時は、波方と倉敷の2カ所しか施工されていませんでした。今後の新規建設は今のところはない、と聞いています。次の年の2009年には、もう一つの倉敷の地下備蓄基地の建設の見学でした。その両方に参加した土木工学系の教員・学生は、非常にレアではないのでしょうか。


水封トンネルの原理(JOGMECホームページより)

この参加経験は、発電・エネルギーという観点で、講義で生かせそうです。調べてみると、JOGMECのオフィシャルページとして、Youtubeにも、波方・倉敷の上記建設のビデオが公開されており、秀逸です。これも活用します。

倉敷国家石油ガス備蓄基地 建設の記録「地下岩盤に築く」


そういった見学会を企画・実行する横浜国大土木工学教室は凄いと思いますが、その中にいることができたのもラッキーでした。

コンクリート工学系の授業では、他にもっと教えることが多く、通常ダムの話をすることは無いですが、この電気工学概論を通じて、発電という観点から、ダムを教えることができます。それも、本体構造や河川水文学の観点だけでなく、発電所やそれに至る導水路(水圧鉄管)なども、対象になります。

黒部ダムの建設、高熱隧道なども、勉強して、そしてコンクリート研究室の夏合宿で行きましたし、先日のフランスのマルパッセダム崩壊現場の見学の話も、繋がります。田辺朔郎の京都インクライン、トンネルつながりで言えば、丹那トンネルを題材にした「闇を裂く道(吉村昭)」もしかり。発散しがちな内容をどうやってまとめていくかは最後の詰めで大事ですが、私の中では、これまでの見学会の集大成としての位置づけのように感じます。

そう見ると、特に発電の部分は素人だということに気づかされて、まだまだ勉強です。


上記の見学会の全てを一緒に経験した元上司の横浜国大の細田先生は、土木史の授業を受け持ち、文系の学生も含めた約200人の学生を相手に講義をしていますが、私もその気概でやっています。


原子力発電所などのセンシティブな所も、避けて通れませんが、これも横浜国大元教授のT先生から紹介を受けた、松永安左衛門の「爽やかなる熱情」でも語られている東京電力の誕生と大きく関係しています。そういう歴史経緯からも含めて、地震・津波の話もできるでしょう。そう考えると、私が欠席した浜岡原発の防潮堤の見学なども、行きたかったと今になって思います。

火力発電所は、まだまだ語るところまでは達していませんが、コンクリート系では、フライアッシュなどを切り口に、広げていきたいと思います。

土木工学は総合工学だというのはまさにそうで、今回は電気という観点から、土木工学や世の中を切り取って、技術者として何を知り、どう考えるべきなのかを提示していきたいと思っています。

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