2012年4月26日木曜日

オランダ出張の総括


もうすぐ帰国1週間になるが、5泊7日のオランダ出張が終わった。

6年ぶりのヨーロッパ。手を上げなければ実現しない出張であったが、手を挙げてよかったというのが率直な感想だ。国際会議出席でなく、RILEMというヨーロッパの建設材料に関する学術委員会の、コンクリートの品質評価に関する技術委員会で実施される共通試験の実施に参画するというものだった。簡単に言えば、現地に乗り込んで実験をする、というのがミッションだった。参加の機会を与えて頂いた関係の先生方に感謝するとともに、研究室でも1週間不在中にサポートしていただき本当に感謝している。

国内の現場調査・現地測定は2ケタ以上の数をこなしてきたが、荷物を厳選しての海外での測定は初めてだった。検討の結果、重い部品「真空ポンプユニット(9kg)」だけ送ることにし、それ以外はスーツケースに、先行して行く博士課程の小松君と分担することになった。

今回の出張の一番大きなトラブルは、送った荷物が現地に届かなかったこと。送付を担当した小松君は責任を感じていたようだが、手段としてEMSを選択したのは私だし、すべての責任は私にある。現地での対応は彼にお願いし、最善策を探った。用具が無かったのでできませんでした、では、何のためにお金をかけて行ったのかわからない。どんな手段を使ってでも、計測してこなければならない。

幸い、行方不明のポンプ本体については、他の参加者のポンプに接続させてもらえれば、操作性は格段に劣るものの原理的に動くので、あとはそのコネクタが合うかどうかのチェックと、ポンプ以外にも付属品を同封していたもので致命的になるものがないかということ、であった。

正直、荷物を送ることには強い不安があった。現場調査では、私はいろいろな不具合は想定して安全余裕度を設けているが、その部分だけ、余裕度がゼロというのは怖かった。他は、全ての種類の部品が壊れてもリカバリーできるように、替えの部品は持っていたのに、ポンプは届かなかったらアウト。私なりの想定への対処としては、EMSのウェブ配達状況チェックにて、私の出国までにホテルへのポンプの配達が完了していない場合には何らかの代替手段を講じるということであった。私の出国前日になって、先に現地入りして、RILEMの会議へ参加した小松君から報告があり、今回の測定で用意された試験体は予想を超える数であったとの連絡を受けた。当初準備していた1セットの測定では間に合わない恐れがあることから、急きょ、荷物を増やすことになった。

その際、単に不足した1セット分追加で用意するだけでなく、その時点でEMSでポンプ一式の到着確認できていないことから、送付した装備一式が無いという仮定の下で、現地でポンプの機能さえ借りられれば最低1セットできるように道具を準備した。

そうこうして、予定よりも3時間遅れて帰宅し、それから深夜までパッキングし、翌早朝、重い荷物を抱えながら成田空港、12時間のフライト、アムステルダムへ到着と宿泊、翌朝電車で2時間揺られて、会場である、オランダのフェンローというドイツ国境付近の街にたどり着いた。そこで、小松君からホテルに荷物が届いていないとの衝撃の電話を受けたのだった。

もちろん焦ったが、半分は、用意した1セットで、他からポンプを借りることさえできれば何とかなりそうだとの確信もあったので、最善を尽くそうとの決意に変わる。2日前の出国の際に準備した道具が本当にそろっているのかを確認するまでが不安だった。何しろ、試験器具を抱えて慌てて帰宅したら、何と自分の大学のカメラを持ち帰り忘れてしまい、たまたま自宅のデジカメも行方不明で、成田空港でデジカメを1台買う羽目になったのだから。忘れ物はこれ以上許されない。

3日間の測定では、集まった世界(ヨーロッパが多いが、アルゼンチンも)からの研究者と共にコンクリートと対話することが刺激的だった。皆、自信を持って話しかけてくる。ひるんではいられないが、やはり言語のハンディが。ディスカッションは既に事前に日頃の委員会で終わっているのか、現地ではいきなり測定だったので、他者が何をやっているのか当初は良くわからなかったが、空き時間に対話しながら把握。でも途中から、1セットの装備で計測を行うのはハードで、1回の測定のインターバルを改善しながら縮めていき、制限時間内に終わらせるのは、心理的にも体力的にもハードであった。慌てて初回測定の際に私の不手際で試験装置を落下させて、いきなり部品を1個壊すトラブルもあったが無事回避。さらに、寒い。気温は10度ぐらい。そして、にわか雨が降ったり、急に晴れたり、最終日は特に強風が吹き荒れて、コンディションもシビアだった。

色々あって、3日間の測定を終えた。翌日からの大堤防のツアーや、アムステルダムの見学は、次回の記事として、総括を。

・非破壊試験を議論している世界のまさに最前線の技術者と触れあうことで、ある方面では私も世界の最先端を行っていることを認識し、研究へのモチベーションは確実にアップしたこと。
・海外に行くことへの不安、コンプレックスは、ゼロにはなっていないが、格段に敷居が下がったこと。体験してみることの大切さ。
・英語へのモチベーションも、改めて。こうやって追い込まないと。
・今回、装置のコンパクトさも大事な要素と認識。これまでは、冗長性、誰がやっても壊さないシンプルさ、堅牢性を重視して、9kgになっていたが、私の直感では、もっと小型化、軽量化できる。このモチベーションは、薄々感じていたが、日本で測定をする限り不具合は生じていなかった。研究予算との兼ね合いだが、改良の方向性も見えた。

ちなみに、愛しいポンプ君は、まだオランダを旅している。

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