2018年4月26日木曜日

「2つ」のもつ意味

1を聞いて10を知る。2を聞いてNを知る。

この言葉は、高校時代、塾で数学を教えていただいた古市先生の言葉である。私の座右の銘を問われれば、この言葉を挙げることが多い(たまに忘れる)。

色々な意味を持つと思っているが、それは本稿では置いておく。


本稿での意味について、簡単にいうと、「1つだけでは全体を理解するのに限界があるが、2つ知れば世界がわかる」。

高専では、力学系授業を教えているが、曲げモーメント、ひずみ、断面二次モーメント、ヤング係数、等は目に見えないし、普段の生活ではあまり使わない概念である。

いくら定義を勉強しても、「そういうものだ」という暗記系になってしまい、単元のテストでは合格するかもしれないが、その後忘れられたり、次に別の形で出てきたときには覚えていなかったり関連があると気づかなかったりで全く使えない。

これは学生が悪いのではなく、教え方や学び方に課題があると思っている。

結論として、別の見方も同時に理解しておくと、理解に繋がると思う。

例えば、「断面2次モーメント」が何なのかの理解について
「定義通りの式が提示できる」に加えて、
「梁の曲げの抵抗にどのように効いてくるのかを示す数値である」ということも頭に入れておくとよい。

それでも若干不足している。曲げの抵抗に関係するのは確かである。ただし、曲げやすくなるのか、曲げにくくなるのか、のどちらに意味がもとれるため、その理解では不十分である。よって、それを補うとしたら、断面2次モーメントが「大きくなると」梁が「曲げにくくなる」という性質まで捉えておくとよい。

よって、2つめは、「梁の曲げにくさを示す指標」としておけば、独立した概念となる。古い教科書を読むと、「曲げこわさ」という用語が使われている。言い得て妙である。曲げ易さではなく、曲げにくさなのである。これは大きく区別すべき重要な概念である。


さて、3次元の物体を、2次元の図面として図化するのに、6面の投影図があればお釣りが来るぐらい十分である。図面1枚は2次元で2つの次元をもつので、次元の数が3を越えるためには、図面2枚があることが必須である。大抵の場合には、2枚の図面から、3次元の形は想像できるのはそういう理由である。こういうものとアナロジーがある。


昨日の授業では、鉄筋コンクリートの曲げ耐力を求める際に、材料非線形を簡単に計算するために「等価応力ブロック」で置き換える話をした。

等価応力ブロックが何故そういう風になるのか、というのは一見わかりにくい。そういうものだと暗記するのは悲しい。

授業では、

等価なものに置き換える
→力学的に等価なものに置き換える
→力の本質は、大きさ、作用点、向きである。ここでは軸方向を考えるので向きは共通のため除外すると、大きさ、作用点、の2つが、力の本質である。
→等価応力ブロックにおいて、ブロックの大きさは力の大きさに対応する、ブロックの高さは合力の位置を規定するので作用点を表す。
→よって、上記の2つの観点は必須であり、それにより、等価応力ブロックの形状が1つのみに定まるのである。

という話をした。
学生は、そんなこと初めて聞いたという顔をしている。いや、そうではない、と続けた。

実は1年前の構造力学1において、分布荷重が載った梁のモーメントを計算するのに、計算を簡単にするために、分布荷重の中心位置に、分布荷重を集中荷重に置き換えることは普通にやっている。これは、実は上記と同じ作用なのである。

その直後、私には、多くの学生の頭に「!」が見えた、気がした。


という風に1年前の授業と今回の授業の2つが繋がった。これもまた2つである。

追記:この文章を書き終えて、過去のブログを見ていたら、似たようなタイトルで2月にブログ執筆していたことに気づいた。すっかり忘れていた。こちらへ。
 2つの指標でとらえる

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